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Kiki's letter on web vol.30

キキ通信 vol.30

2013.7.21.sun.

11年前の、7月に植えた庭の葡萄の木は、

今ではこんもり繁り、重い程実をつけている。

ワインになる品種と聞いていたが

夏の旅の前にと、早めの収穫をしてしまった。

色も 形も 香りも 美しい。

この先当ても無い、山積みにされた葡萄の実を籠にいれてみると

絵の様だ。

猫のミミと私だけの時間にマリードールが観ている。

こんな日に

フォンティーヌの「ラジオのように」を聴いている時間が

何処かの場所にあるらしい。

 

視覚 聴覚 は いつか

美しく再現する共通の記憶となり

再び、そこに物語がはじまる。

 

パリ以来の明日の再会では又パリがよみがえるだろう。

「パリ風おもてなし」の企画に夏の暑さも忘れそうだ。

葡萄を籠に一杯入れてテーブルに飾ってみようかと。

Kiki's letter on web vol.31

キキ通信 vol.31

2013.9.22.sun.

秋晴れです!

乙女座の夏も過ぎ、嵐も過ぎ、月見うさぎも終わりました。

夏の残骸、過去へのオマージュから再生するこの季節。

冬へ向かう初秋の頃は私の身支度の季節でもあります。

去年の今頃は、巴里にいたのだと想うと

今、私は何をしているのだろう。何をするのだろうと。

この季節は、私にとって、何かを想う時かと。

あの、宵待草が終わったのも

秋深い季節だった。

終わるから、始まりもあるのだろうと。

ひとり満月を見て想う。

次の月が満るのは八年後と言う。

果たして私、生きているだろうか。

いつもの様に、あれこれ想い起こしているだろうか。

ポッンと考えてみたりした。

次の日、宝島出版社の編集の方から、電話を頂いた。

酒井景都さんの取材依頼の連絡。

撮影当日、景都ちゃんと私の何年ぶりかの再会は

話がつきなかった。

「わたしが小さい時の服を、

 キミコさんの人形が着てくれているんだね。」

と、言った景都ちゃんの言葉に忘れかけていた私の人形と服へのあの時の思いが、胸にしみる程よみがえった。

そして、絵が行きづまった時に景都ちゃんのイメージを一気に描きあげた時の絵が、ひっそりと今もこの屋根裏にある事を思い出し、景都ちゃんと対面した。

しばらく使っていない屋根裏の天窓から陽が射し込んでいる。

埃を払いのけながら閉ざした戸を開けた。

森の木が、初秋の風を奏でるように枝葉を伸ばし、

衣装替えの身支度をしている様だ。

 

景都ちゃんのロケバスを見送り屋根裏に戻り、

何日か前に私の相方になったMac Book Airが反抗しているので、

まだ付き合いの浅い相手をなだめながら帰る準備をしていたら、

突然靴音がして、カヤくんが入って来た。

宵待草の店を譲り渡してから会う事の無かった彼は、

偶然通りがかったのでと。

人は疲れて眠る時もあれば、何かに呼ばれる様にして出会い、

記憶を呼び起こす時もある。

過ぎた日の出来事も、やがて色あせながら、秋の葉の様に鮮やかさを迎えやがて朽ちて行く。

やはり、この森には精霊がいるのだろうか。

夕暮れの森は、秋の空気が通り抜けていた。

この場所は私には瞑想の隠れ家かも知れ無い。

そんな想いを抱きながら私は、

通りに出るとタクシーに手を上げた。

Kiki's letter on web vol.32

キキ通信 vol.32

2013.10.13.sun.

2013.10.4 La musee にてアツコ・バルーとの再会」

渋谷Bunkamuraの向かい側にあるSARAVAH東京の6Fに

今年6月にオープンした<La musee アツコ・バルー>は、

待ち望んだ空間だ。

音楽とアートを楽しみ

飲み交わし、語る場所こそ、

私も望んだテーマだ。

アツコ・バルー!良くやった!

この日の再会に心が弾むのは

不思議な予感がするからだ。

久々の再会と、この空間の場所が出来た話に弾むアツコ・バルーと吉田キミコ

Kiki's letter on web vol.33

キキ通信 vol.33

2013.11.24.sun.

ノエルに寄せて

 

秋が足早に過ぎると、あっという間に街路地の木は色を染めて、

葉は今を惜しむように舞い落ちていく。

街中には約束ごとのようにイルミネーションが灯り、

何事も無い同じ景色が、又訪れる。

いくつもの季節を繰り返したある日、

箱の中から沢山の古いノートを見付けた。

それは、

日々の出来事の記憶を記したコラージュのメモリアルだった。

 

秋から冬に変わるこの季節を綴ったページには、

同じ言葉が記されている。

 

何年もの時間を振り替えれば、

何にも無い静かな時間があった事が分かる。

都会の輝きでは無くガラス戸の向こうの幻想のイメージが視えた。

 

なんて素敵な事だと思った。

ゆっくりと動く時計や、

風の音を感じる静けさを大切に想える時間が、其処にあった。

 

時には自然は変貌をし全てを奪い去って行く。

無惨に破壊した後、いつもと変わらぬ静けさが再び戻る。

そして人も自然を壊している事を忘れてしまう。

 

何ごとも無い静かな、同じ季節が今年も訪れた。

 

今年のノエルは精霊の物語を空想してみようと、

今までに描いた天使たちを並べてみることにした。

 

---noel information

森の中のノエル

2013年12/14(土)~12/25(水)まで

場所:うさぎ館

時間:PM1:00 - PM6:00

*12/21(土)は吉田キミコ不在

直通mail : coco.kiki2278@gmail.com

Kiki's letter on web vol.34

キキ通信 vol.34

2013.12.31.tue.

ノエルの屋根裏物語

 

2年余り閉ざされた、屋根裏の窓を開きました。

これから迎える2014年に向けての

今回は初めてのプレオープンでした。

今迄、人様に入って頂く事は無く、

秘密の屋根裏として、開く事はありませんでした。

地下のワインカーヴや、うさぎ館での展示を、

ガレットを召し上がった後に、ちょっと覗いて観て下さればと、

そんな思いでのノエルでしたから、

どなたにもお知らせはせず、HPのみの掲示でした。

 

そのため、私は秘密の屋根裏で

久々に、窓を開けて灯りをつけておりました。

誰を待つと言う事も無く、

「森の中の子供」(久保田恵子さんのCD)を聴いておりました。

 

ところが、

屋根裏に昇る靴音が、騒がしくなってきたのです。

秘密の屋根裏は、懐かしい顔が覗きました。

遠く関西の乙女屋さんから、コトリ花店のお花が届きました。

ずっと会っていない人も、

ブーケやワインを持って入って来ました。

何度も、焼きたてのパンを持って運んでくれた人も

何時間もかけて、息をきらせて駆け込んだり、

沢山の人が屋根裏の階段を上って会いに来てくれたのです。

静かな、秘密の屋根裏に住む人形達は、

毎年ひっそりと過ごしているのに今年のノエルはどうしたの?

と、きっと驚いていると思います。

 

最終日は、細やかなスタッフとの打ち上げになりました。

ミキの弾き語りのギター演奏の音色で幕を閉じました。

予想もして無かった、2013年のノエルの屋根裏物語は、

無事終了しました。

今回、ご連絡出来ずの数日間でしたから、

来て頂け無かった方にはお詫び申しあげます。

そして、予想もしていない沢山の方が訪ねて下さった事に、

心から感謝いたします。

 

2013年が、後数時間で終わります。

笑いながら語った時間も、

泣きながら夜通し話した事も

全ては、2014年の新しい物語の次のページとして開けば、

きっと屋根裏の窓も、もう閉ざす事は無くなるかも知れません。

沢山の方々に励まされた、2013年でした。

幕が下りるフィナーレに感謝して乾杯です。

 

全ての人々が、幸せであります様に

祈りながら去りゆく年を

見送りたいと思います。

Kiki's letter on web vol.35

キキ通信 vol.35

2014.1.7.tue.

Bonne Annee!

 

2014年があけました。

新しい年に、

幸せの数が繰り返し訪れますように。

命ある物が、

温かく美味しい時を過ごせますように。

世界中の人たちが、

歓びの笑顔になりますように。

 

七つの草のお粥を食べたら

入り口の飾りを、外します。

 

陽だまりの、扉を開いて

 

それから、猫のミミも

 

今年もよろしくお願いします。

Kiki's letter on web vol.36

キキ通信 vol.36

2014.1.9.thu.

1月8日 朝

猫の ミミが 永眠いたしました。

 

通信の写真を撮った時は前日の7日でしたのに。

 

ミミの埋葬は、カブくんのいる深大寺動物霊園です。

 

絵や写真の中で永遠に存在しているミミは、

幸せだったと思います。

 

ミミを愛して下さいました沢山の方々にお礼を申し上げます。

 

もう、呼吸をして無いミミですが

目を開き お別れをしています。

 

ありがとうございました。

Kiki's letter on web vol.37

キキ通信 vol.37

2014.1.17.fri.

冬の夜空の満月は、何とも寒そうで

それが、雪景色の夜だとしたら

シーンとした静かな気配の中で

ひとり神秘な世界に入リ込みそうになる。

どちらかと言うと、夏の季節より私は冬が好きなのに、

この頃は寒さがめっきり弱くなってきた。

東京に雪が降ると街からはずれたこの界隈は、

道の雪は氷つき、いつまでも溶け無い。

昔は、雪が舞落ちるのを見て

美しいとため息をついたものだったが。

 

ヴァレンタインの日に、

私は毎年恒例行事のように展示企画をするのが

3年ばかり続いていた。

最初の年の事だったが、

昼から降りだした雪は、夜には大雪になった。

井の頭の森にあるレストランでの展示だったが、

そこから見る雪景色は、それはそれは美しく

眺めているだけで幸せだった。

そんな雪の日にどこからとも無く人が集まり、

店の中は熱気に溢れ

満席に近く賑わったのが、遠い昔のような気がする。

3年続いた、そんな出来事も今年は

辞める事にした。

今年もそんなヴァレンタインが近づき、

雪が又降るだろうか。

 

少し前、NYに滞在中のwebデザイン担当の南さんから、

大寒波の雪便りが送られて来た。

アシスタントのチエちやんは

フィンランドに以前オーロラを観にいったらしい。

 

寒そうで、今の私は暖炉があれば

そこから離れ無いかも知れない。

冬こそ、本を読み温かいスープを作り、

瞑想に耽る時間は私の気ままな一人暮らしのひと時。

今、もうそこに猫のミミが居ない。

いつも、温かいミルクを一緒に分けたのがまだ癖になっていて、

又、ミルクを多めに沸かしてしまった。

Kiki's letter on web vol.38

キキ通信 vol.38

2014.2.16.sun.

朝から降りだした雪はもう、どれ位積もっているのだろう。

こんな夜は温かいショコラショが飲みたい。

もう後数時間で2014年2月14日が終わる。

 

部屋の中は暖かく

テーブルの上の小さな植物は灯りの下で芽を伸ばし出した。

このテーブルには、ひと足早く春が訪れている。

 

外から、ドサッと屋根の雪が落ちる音がして、

また外は静かになった。

 

もう何時になるのだろうか。

そして又、何ごとも無い明日が始まるまで bon nuit

Kiki's letter on web vol.39

キキ通信 vol.39

2014.3.3.mon.

春が来る前に

雪解けのある日

森の中の秘密の屋根裏には、

人形屋佐吉氏と映画監督片岡翔さんが訪れて

久しぶりに、長い話をした時、

「冬眠から覚めなさい。キミコさん時間が無いよ!」

の佐吉氏の電話に目を覚ました日の事を思い出しました。

時はいつしか早春になり

今日は、雛祭り。

思えば人形を祭る日、

全ての人形達は、永遠の命と美しさを授かりながら、

語る事も無く黙って唯、過ぎる時間を見つめている。

何年も過ぎる時間を見てる人形の眼は決して泪を流す事は無く

笑みを感じる。

屋根裏に居る人形よりも、

佐吉氏の人形の家や、

小澤清人氏の部屋の数え切れない程のあの人形達は

何を今見ているのだろう。

時は容赦無く過ぎて

新しい季節が訪れます。

限りあるこの時間や再び迎えるこの季節に

私は冬眠から覚める準備の為に、

いつしか又夢の物語のページをめくり始めているのです。

春はもう約束通りすぐそこまで来ているから、

この森の生命力は春に備えて準備に忙しそうだから、

私もそろそろ準備をしなくては。

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